『ウィッチャー』原作小説紹介! 海外の名作ダークハイファンタジー

特集

大陸の南方を支配する帝国皇帝や、誰も敵わない最強の魔術師、そして異世界を支配するエルフまでもが、ヒロインの少女を攫って孕まそうとするダークファンタジー・・・・・・。

と紹介すると何かいかがわしい作品に思われてしまうかもしれないが、ゲームシリーズ累計3300万本以上の大ヒット作である『ウィッチャー』の原作小説のお話だ。

なんかもう、どの勢力もシリを妊娠させようとしてきて、ちょっとビックリする(主に5巻)。

 

で、その『ウィッチャー』は、ポーランドのアンドレイ・サプコフスキ氏による小説シリーズが原作。

1986年にSF雑誌で短編が掲載されたのがスタートで、その後3冊の短編集と、全5巻からなる長編が出版された。

小説は300万部以上のベストセラーシリーズになっており、ポーランドでは『指輪物語』に匹敵する知名度を誇るファンタジー小説なのだそうな。

日本では長編の最初の1巻のみ翻訳されたものの、続刊が出ることがなく長らく放置されていたのだが、ゲーム『ウィッチャー3』のヒットにより、1巻の再翻訳(ゲーム版の用語に合わせた)を含めた、長編全5巻の翻訳がこのたび無事全て出版された

まぁ短編集は翻訳されていないのだが、それは読まなくてもただちに影響はない(はずだ)。

それに一応長編1巻の冒頭で、短編集で起きた出来事のあらすじは書かれている。

というわけで、長編シリーズを一通り読み終えたので、ゲームシリーズのファン向けに、小説版の内容を大きなネタバレにならない範囲で紹介していこう。

 

ちなみに、もしまだゲーム版をプレイしていないという人には、小説と合わせてゲーム版のほうも購入することをオススメする。

1~2作目は未プレイでも問題ないが、『ウィッチャー3』はゲーム史に残る名作RPGなので、ゲーマーならばプレイしておかなければならない作品だ。

チュンソフトのローカライズも素晴らしい。

ダークハイファンタジー小説『ウィッチャー』

小説は、特別な力を持ったエルフ(ララ・ドレン)の遺伝子を引き継いだがために様々な勢力から狙われることになったシリと、全ての勢力を敵に回してでもシリを助けようとするゲラルトの、2人の冒険を中心とした物語になっている。

 

シリはシントラの王女として生まれながらも、故郷をニルフガード帝国に蹂躙され、10歳にして国と家族を失ってしまう。

その後、シリと運命で結ばれたゲラルトに引き取られ、ウィッチャーの里のケィア・モルヘンでゲラルトたちと暮らしたり、寺院で女魔術師のイェネファーたちと暮らすも、身分や生まれ持った力により、様々な勢力から追われ続けることになる。

ゲーム『ウィッチャー3』では異世界のエルフ(アイン・エレ、あるいはアエン・エレ)であるワイルドハントからのみ狙われていたシリだが、小説でシリを狙うのはアイン・エレだけではない。

ニルフガード帝国の皇帝エムヒル・ヴァル・エムレイスに始まり、テメリアやレダニアなど北方諸国の王たち、世界最強クラスの魔術師、反皇帝派が雇った殺し屋、フィリパ・エイルハート率いる女魔術師会からも狙われる。

捕まると孕ませられるか、あるいは殺されるかなのだから大変だ。

中には胎盤を取り出そうとしてくる輩までいてコワイ。

 

そのうえ父親代わりのゲラルトや、母親代わりのイェネファーからも引き離され、14歳にして一人で壮大な冒険をするはめになってしまう。

水も食料もないまま砂漠をさ迷い歩くことになったり

盗賊に身をやつし、強盗殺人を働いたり

捕まり見世物にされたり

様々な異世界や異なる時代を旅したり

・・・・・・とまぁ、普通のヒロインではあまり体験できない経験を重ねる。

ゲームも逃亡の旅だったが、シリがまだ幼く弱いこともあって、小説のほうが大変そうに思える。

 

一方ゲラルトは、シリーズ恒例の吟遊詩人ダンディリオンや、『ウィッチャー3』のDLCで登場したレジスその他諸々の仲間たちと共にシリ捜索の旅をする。

当初は「仲間なんぞいらん!」とツンツンだったゲラルトだが、次第にデレて、ゲームではなかった仲間たちとの楽しい旅(?)が描かれることになる。

さらに道中では、リヴィアのメーヴ女王から騎士の爵位を授かり、ダンディリオン曰く「(ゲラルトは)名誉を楽しみ、恩寵と厚意に浴し、名声を味わった」という幸福な体験をする。

さらにゲーム『ウィッチャー3』のDLCでも訪れたトゥサンでは、女魔術師との浮気生活を送りながら、新たな親友と共に楽しくウィッチャーの依頼をこなして金を稼ぎ、悠々自適な暮らしに浸る。

(その頃シリは殺し屋などに追われており、イェネファーは捕まり拷問されている。)

リヴィアのゲラルトは、ゲームでも小説でも相変わらずであった。

 

まぁ多少の誇張を含んだ冗談はさておき、ハラハラドキドキの連続で過酷なシリパートに比べて、ゲラルトパートは比較的安心して読める楽しさがあった。

これにはお調子者のダンディリオンの存在も大きいだろう。

ダンディリオンはゲラルトのために命がけで行動しつつも、道中で自伝を書いたり、公爵夫人とロマンスを送ったり、死刑判決をくらったりと、雰囲気を和ませてくれる。

 

またそれらの冒険と並行して、様々な陰謀や政治、帝国と北方諸国の大戦争も描かれる。

そうして戦争で人心が荒廃した結果、最後はゲーム『ウィッチャー2』などで語られたように、あんなことやこんなことになってしまうわけだが、そういった結末を知っていても楽しめる小説だった。

しっかりとした重厚な世界観が築かれたハイファンタジーで、少女のシリと、伝説的ウィッチャーのゲラルトの2種類の冒険が用意されているので、冒険物のハイファンタジーが好きな人にオススメだ。

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