(3月3日更新)
Kindleでは芥川龍之介、夏目漱石、太宰治、宮沢賢治といった、著作権の切れた近代文学作家の全集や選集が99円や200円などの価格で配信されている。
そういった格安の作品集いくつか紹介しよう。
(※紹介文は気が向いたときに追記)
日本の作家
芥川龍之介
古典アレンジから私小説まで、様々な傑作短編小説を残した作家。
小説の同人活動をしながら、優秀な成績で東京帝国大学を卒業。
海軍機関学校の英語教官の仕事をした後、毎日新聞社に入社して専業作家となる。
作家としては学生の頃から短編の傑作を残し続けた一方、長編はまったく書けなかった。
さらに次第に精神障害その他諸々の悩みで苦しむようになり、「唯ぼんやりした不安」を動機として35歳の若さで自殺してしまう。
ちなみにその自殺を悲しんだ友人の菊池寛により、新人文学賞の「芥川龍之介賞」が創設されることになる。
当初はまったく注目されない小さな賞だったが、石原慎太郎が受賞し、慎太郎ブームが起きたのがキッカケで大きく取り上げられるようになった。
代表作には『羅生門』『芋粥』『蜘蛛の糸』『河童』など。
夏目漱石
日本で一・二を争うベストセラー小説の『こころ』などで知られる、近代日本文学を代表する文豪。
芥川龍之介の師匠でもある。
帝国大学(東京帝国大学)を卒業した後、中学教師やイギリス留学などを経て、第一高等学校と東京帝国大学の講師を務める。
しかし担当していた生徒が自殺してしまい、その風評被害により精神衰弱を患ってしまう。
その治療の一環として創作を勧められたことで執筆したのが有名な『吾輩は猫である』で、それが大ヒットしたことがキッカケで作家への道を選択する。
また小説を書く前には俳人としても知られていた。
大学時代には俳人の正岡子規と友人になっており、漱石の優れた漢文や漢詩に子規は驚いたらしい。
その後の教師時代には、学生たちが漱石を盟主に俳句結社を興している。
代表作には『吾輩は猫である』『坊っちゃん』『こころ』など。
森鴎外
夏目漱石と共に明治期を代表する文豪。
19歳で現・東京大学医学部を卒業して陸軍軍医となり、軍医のトップまで出世しながら文筆活動も行った。
初期代表作の『舞姫』は、軍医時代のドイツ留学中の出来事をもとに描かれたもので、日本人と外国人が恋愛関係になるという内容が当時の人々を驚かせたらしい。
ちなみにモデルとなった女性の正体探しがその後100年ほど行われ、無事(?)特定された模様。
代表作には『舞姫』『雁』『山椒大夫』など。
太宰治
逸話に事欠かない人間失格な自己破滅型作家。
名士の家に生まれた秀才少年だったが、高校や大学頃から次第に私生活が乱れていき、自殺未遂や自殺幇助、薬物中毒、借金などを繰り返すようになる。
自殺未遂に及んだ回数は4回で、最終的には5回目にして自殺が成功してしまう。
芥川龍之介の自殺にも影響を受けていた模様。
代表作には『走れメロス』『斜陽』『人間失格』など。
坂口安吾
太宰治らと並んで無頼派を代表する作家。
子供の頃から反抗的だったが、中学時に陸上の全国大会で優勝したり、大学時に睡眠時間4時間で猛勉強をしたりと、文武ともに優秀だった模様。
小説家になってからは純文学、歴史小説、推理小説、エッセイ、囲碁・将棋の観戦記など、多彩な作品を発表した。
また薬物中毒になったり、税金不払い闘争をしたり、競輪告訴事件を起こしたり、ライスカレーを百人前頼んだりと、太宰治と並んで逸話には事欠かない。
ちなみに税金不払い闘争は映画化された。
代表作には『風博士』『堕落論』『白痴』など。
吉川英治
大衆向けの時代小説で幅広い層に親しまれた国民文学作家。
小学校を中退して働きながら独学した苦労人で、小説が売れて貧困を脱してからは妻のヒステリーで苦労した。
戦後には一時期日本で一番稼いだ作家になっており、また文化勲章も受章する。
代表作には『宮本武蔵』『三国志』『新・平家物語』など。
江戸川乱歩
日本を代表する推理作家。
ペンネームはエドガー・アラン・ポーのもじり。
早稲田大学を卒業後に貿易会社、古本屋、ラーメン屋などの転職を繰り返し、最終的に小説家になる。
「日本の三大名探偵」の明智小五郎を生み出すなど国内の探偵小説を開拓し、また「少年探偵団シリーズ」は少年たちから絶大な支持を受けた。
ちなみに実際に探偵として探偵事務所で働いていたこともある。
代表作には『D坂の殺人事件』『怪人二十面相』『探偵小説四十年』など。
宮沢賢治
死後に国民的作家となった詩人・童話作家。
農学校の教員や、農作、工場技師の仕事をしながら詩作に励み、生前にはほとんど作品は発表されなかった。
しかし死後に多数の作品が刊行されたことで評価が高まった。
郷里の岩手県が大好きで、岩手県をモチーフとした「イーハトーブ」という理想郷を造語したことでも知られる。
代表作には『雨ニモマケズ』『銀河鉄道の夜』『風の又三郎』など。
谷崎潤一郎
ノーベル文学賞の候補に7回以上選ばれるなど、国内外で高く評価されたマゾヒズム作家。
東京帝国大学を中退して作家になり、終生旺盛な執筆活動を続けた。
女性関係のもつれも有名で、谷崎・妻・妻の妹・谷崎の友人の4人で三角関係だか四角関係だかに陥り、最終的に妻を友人に譲渡するという「細君譲渡事件」を起こした。
それを作品にもしている。
代表作には『刺青』『陰翳禮讚』『細雪』など。
中島敦
若死にした寡作の天才作家。
東京帝国大学を卒業し、教員やパラオ南洋庁の官吏を経て専業作家になるが、持病の喘息悪化により33歳の若さで病没。
最期の言葉は「書きたい、書きたい」「俺の頭の中のものを、みんな吐き出してしまひたい」。
死後に出版された全集は毎日出版文化賞を受賞した。
代表作には『山月記』『光と風と夢』『李陵』など。
樋口一葉
近代以降で最初の職業女流作家。
幼い頃は優秀な学生だったが、「女性に学業は不要」との母親の考えにより退学させられ、さらに父親は出資金を騙し取られて負債を残して亡くなる。
そのうえ婚約破棄となり、10代にして苦しい借金生活を強いられる。
その後は図書館で独学して小説家になり活躍するが、肺結核により24歳の若さでこの世を去ってしまう。
活躍した期間は「奇跡の14ヶ月」とも呼ばれている。
代表作には『大つごもり』『にごりえ』『たけくらべ』など。
小泉八雲
ギリシャ生まれの新聞記者・紀行文作家・随筆家・ 小説家・日本研究家・日本民俗学者。
アイルランド人とギリシャ人のハーフで、ギリシャに生まれ、フランスやイギリスで教育を受け、アメリカで就職し、最終的に日本国籍を取得する。
作家としては日本各地の怪談話をまとめたり、欧米に日本文化を紹介する著書を遺して貢献した。
代表作には『骨董』『怪談』『知られぬ日本の面影』など。
永井荷風
新美南吉
島崎藤村
泉鏡花
梶井基次郎
菊池寛
国木田独歩
小林多喜二
夢野久作
林芙美子
幸田露伴
有島武郎
堀辰雄
室生犀星
小川未明
織田作之助
海野十三
海外の作家
フランツ・カフカ
死後に世界的ブームとなったチェコ出身のユダヤ人ドイツ語作家。
人格の優れた有能な保険局員として知られており、仕事の後に小説の執筆をしていた。
しかし父親との軋轢に苦しめられ、さらに結核を発症して40歳でこの世を去る。
第一次世界大戦の影響で専業作家になることを断念したこともあり、生前にはあまり作品を発表しておらず、有名ではなかった。
死後に草稿やノート類を全て焼き捨てる様にと遺言を残すが、友人により出版されてしまい、その結果、20世紀の文学を代表する作家と呼ばれるまでになる。
代表作には『変身』『審判』『城』など。
トーマス・マン
ノーベル文学賞を受賞したドイツ人作家。
高校を落第したり退学したりした後、保険会社の見習いとして働くがすぐに退職。
しかし作家業に専念して数年後の『ブッデンブローク家の人々』で、若くして一躍ヨーロッパのベストセラー作家となる。
ナチス台頭時にはナチズムの危険性を訴えるが、奮闘むなしくナチス政権が誕生してしまい、その後は故郷を離れて長い亡命生活を送った。
自宅はナチスに押収されたが、原稿(『ヨセフとその兄弟』)は娘が命がけで回収した。
代表作には『ブッデンブローク家の人々』『ヴェニスに死す』『魔の山』など。
アントン・チェーホフ
演劇革命を起したとも言われる、ロシアを代表する劇作家にして短編小説家。
当初は医学部に通いながら、生活費のためにユーモア短編を寄稿していた。
しかしユーモア短編の量産は才能を浪費すると警告され、文学的な作品に取り組むようになる。
そうして書かれた戯曲は好評を博し、文壇の寵児となった。
またチェーホフと言えば、創作ルールの『チェーホフの銃』でも有名。
「誰も発砲することを考えもしないのであれば、弾を装填したライフルを舞台上に置いてはいけない」という伏線回収の必要性、あるいはストーリーに無用の要素を入れてはいけないという意味。
代表作には『かもめ』『三人姉妹』『桜の園』『ワーニャ伯父さん』など。
コナン・ドイル
世界的な推理小説の『シャーロック・ホームズ』で知られるイギリス人作家。
父親がアルコール依存症になり苦しい生活を送りながらも、医学部を卒業して診察所を開業。
そして患者を待つ暇な時間を利用して副業で小説を執筆していた。
その10年ほどの後に無資格で眼科医を始めるが、患者がまったく来なかったため、本格的に専業作家となる。
またその頃からシャーロック・ホームズが大ヒットするようになった。
ちなみに創作だけでなく、実際に推理力を発揮して、イギリス警察の冤罪事件を複数暴いたこともある。
代表作には『シャーロック・ホームズシリーズ』『チャレンジャー教授シリーズ』など。
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