Kindleで読めるおすすめな短編漫画をランキング形式で紹介。
ここでの短編の定義は「10巻以内で完結している作品」としている。
逆に11巻以上の長編はコチラ。
また短編という関係上、掲載するのは青年漫画が多くなる。
まぁ少年誌の短編はだいたい打ち切りなので。
- 完結済みの短編漫画
- 【1位】寄生獣
- 【2位】ピンポン
- 【3位】プラネテス
- 【4位】蟲師
- 【5位】攻殻機動隊
- 【6位】BLAME!
- 【7位】孤独のグルメ
- 【8位】スプリガン
- 【9位】幽麗塔
- 【10位】夕凪の街 桜の国
- 【11位】Sunny
- 【12位】すごいよ!!マサルさん
- 【13位】エマ
- 【14位】神々の山嶺
- 【15位】テルマエ・ロマエ
- 【16位】ハチミツとクローバー
- 【17位】羊のうた
- 【18位】竹光侍
- 【19位】日常
- 【20位】彼方のアストラ
- 【21位】銃夢
- 【22位】ヘルシング
- 【23位】ひきだしにテラリウム
- 【24位】山賊ダイアリー
- 【25位】レベルE
- 【26位】セトウツミ
- 【27位】あれよ星屑
- 【28位】僕だけがいない街
- 【29位】土星マンション
- 【30位】いちえふ
完結済みの短編漫画
【1位】寄生獣
人間を捕食する寄生生物との戦いと共生を描いたSFアクション!
高校生の少年・泉新一も寄生されてしまうが、寄生先が右手だったために命を取られずにすむ。
そしてそれから右手の寄生生物との奇妙な共生関係が始まる。
画像は『寄生獣』1巻。謎の寄生生物に寄生される主人公。
「完成度の高い漫画」の話題になるとよく名前が挙がる岩明均氏の名作SFアクション漫画。
星雲賞受賞や評論家などからの高い評価を得ながらも、ハリウッドと契約したのに映像化されず、しかも契約のせいで長いこと他とメディアミックスができなかった不運な作品だったりもする。
物語は謎の寄生生物が突如飛来することから始まる。
寄生生物は人間の脳を乗っ取り、表向きは人間として生活しながらも、裏ではコッソリと他の人間を食い殺していく。
普通の高校生だった主人公も寄生されてしまうが、寄生先が右手だったがために脳を乗っ取られずに済む。
しかしそのせいで右手の寄生生物と共生しなくてはいけなくなり、そのうえ主人公はそのことを周囲に隠しながら、人間を捕食するほかの寄生生物たちと戦うはめになっていく。
こうした「人間そっくりの化物たちが社会に潜んでいる」「人間の主人公がその化物の側になってしまう」というシチュエーションは、『東京喰種』や『亜人』など、その後の作品に大きな影響を与えた。
だけどこの漫画は暗い展開になりそうな不幸な始まりながらも、右手の「ミギー」が愛着の持てるユニークなキャラなため、むしろ熱いバディものになってくるのが良いところ。
食物連鎖の頂点に立つ人間が被食者の立場になるとか、親子愛とか、哲学とか、そういった要素も詰め込まれて深いお話でもあるのだが、シンプルに「人間と人外のバディによるアクション」としてみても面白い。
絵は古臭いけど、ストーリーの完成度の高さは漫画史に残る傑作。
【2位】ピンポン
卓球に打ち込む高校生たちの才能と挫折と成長を描いた青春卓球ストーリー!
一方でペコの親友のスマイルは、いつも無表情で冷めた性格をしており、卓球の実力もペコの陰に隠れていた。
しかし実はスマイルはペコを超える才能を持っており、指導者や実力者たちはそれを見抜いていた。
画像は『ピンポン』5巻。作品ごとに絵柄を大きく変える松本大洋氏だが、今回は細線を多様した黒味の薄いタッチが採用されている。
高校卓球を題材とした『スラムダンク』などと並び称される名作スポーツ漫画。
全5巻ながら無駄なく、才能・挫折・成長・友情のスポ根を詰め込んでいる。
主人公は才能に自惚れて努力をしない少年・ペコと、そのペコを上回る才能を隠し持つが、ペコをヒーローとして慕い、無意識に手加減をしてわざと負ける幼馴染の少年・スマイルのふたり。
スマイルは勝ち負けに興味がなく、高校の部活でもペコの陰に隠れていたが、指導者に才能を見抜かれ、猛特訓の末に全国トップレベルの圧倒的な実力を身につける。
一方でペコは才能にかまけて努力を怠ったことで才能のない努力家を相手に敗北し、また自身を上回るスマイルの真の才能を知り挫折する。
スマイルの才能を前には他の選手たちも心をへし折られていくが、そんな厳しい才能の世界と、その挫折から這い上がるヒーローの物語が熱い青春で描かれていく。
スポーツ漫画としての完成度が高いし、少なくとも短編のスポーツ漫画では間違いなく一番面白かった。
【3位】プラネテス
宇宙で生きる人々を通して「愛」を語る哲学的SFヒューマンドラマ!
宇宙開発により生まれたスペースデブリ(宇宙空間のゴミ)があふれ、旅客機と衝突事故を起こすなどの社会問題となっていた。
そんな中、デブリ回収業者として働く青年・ハチマキは、いつか宇宙船を所有することを夢見ながらゴミ拾いの日々を送る。
画像は『プラネテス』1巻。事故が原因でパニック障害を引き起こし、自己と語り合う主人公。
『ヴィンランド・サガ』で知られる幸村誠氏デビュー作の宇宙漫画。
SF賞の星雲賞で、『風の谷のナウシカ』以来となる原作・アニメのダブル受賞を達成した作品でもある。
舞台は宇宙開発によって生まれたスペースデブリ(ゴミ)が、旅客機と衝突事故を起こすなどの社会問題を起こしている2070年代。
そんな近未来の宇宙で、デブリ回収の仕事をしながら夢を追い求める主人公の葛藤や成長を通しながら、宇宙に生きる人々のドラマが描かれる。
同じ宇宙を題材とした漫画でも、夢に向かって明るく突き進む『宇宙兄弟』とは異なり、こちらは夢を追う薄暗い狂気的なものを感じさせる。
そのうえ愛や人生観といった思想を語ってくるため、哲学的でやや難解だ。
しかしながら全4巻で完成度の高く、そして読み応えのある大人向けのヒューマンドラマになっている。
これを20代半ばのデビュー作で描ききった作者にはただただ脱帽。
【4位】蟲師
怪異を引き起こす「蟲」とそれを解決する「蟲師」の不思議な雰囲気の和風ファンタジー!
常人には見えない「蟲」への対処を生業とする「蟲師」のギンコは各地を旅し、蟲により引き起こされる怪異を解決してゆく。
画像は『蟲師』1巻。蟲に取り付かれた少年。
文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞などを受賞した和風ファンタジー漫画。
「蟲」と呼ばれる妖怪的な存在がいる架空の江戸~明治時代風日本を舞台に、1話完結の幻想的な物語が描かれる。
例えば蟲は耳を聴こえなくするとか、目を見えなくするとか、夢を現世に伝染させるとか、様々な不可思議な現象を引き起こす。
そういった蟲に取り付かれてしまった人々に対し、各地を旅する専門家の「蟲師」である主人公がそれを淡々と解決するお話になっている。
独特の世界観なものの、山々や村々のノスタルジックな日本の雰囲気が醸し出ていて、読んでいてとても心地良く感じられる。
個人的にお気に入りな和風の雰囲気漫画の傑作だ。
【5位】攻殻機動隊
電脳化・義体化が普及した近未来日本を描いたサイバーパンク漫画の金字塔!
より複雑化していく犯罪に対抗すべく、超法規的な防諜機関・公安9課「攻殻機動隊」が結成される。
画像は『攻殻機動隊』1巻。今ではアニメが有名だが原作はこの漫画。
アニメがとても有名でハリウッド映画化もされた、士郎正宗氏によるサイバーパンク漫画。
科学技術が高度に発展した近未来で起きる犯罪と、それに対応する公安警察組織の活動が描かれる。
舞台は第3次世界大戦と第4次世界大戦が起きたパラレルワールドの21世紀日本。
人間の脳とコンピュータネットワークを直接接続する「電脳化」や、サイボーグ技術の「義体化」などが普及している。
そんな社会で、それらを用いた複雑化していく犯罪に対応すべく結成された特殊部隊が物語の主役となっている。
まぁそういった設定はアニメなどで知っている人は多いかと思うが、漫画版に関しては、1巻あたりというか、1コマあたりの情報量が多いことが特徴だろう。
画像は『攻殻機動隊』1巻。サイボーグメイキングの様子。
とにかく情報の密度が濃い、濃すぎる。
枠外を使ってまでビッシリとSF世界が描きこまれている。
描き込まれすぎていてスマホだと読みにくいかと思うけど、タブレットやPCブラウザならまぁ読める。
アニメ版などよりも、よりコア向けのマニアックな作品といった感じだが、これはこれでSF好きな人にオススメだ。
【6位】BLAME!
どこまでも上へ続く巨大階層都市を探索する圧倒的スケールのサイバーパンク・アクション!
災厄により人類は市民権の「ネット端末遺伝子」を失ってしまい、不法居住者としてAIにより排除されるようになってしまう。
サイボーグの霧亥はこの世界を救う鍵となる「ネット端末遺伝子」を持つ人間を探し出すため、果てしない探索と戦いの旅を送る。
画像は『BLAME!』1巻。果てしなく壮大な都市構造物を探索する。
SF漫画の巨匠・弐瓶勉氏の初期代表作。
どこまでもどこまでも上へ上へと続いていく巨大建築物を、不老不死のサイボーグが黙々と探索していくサイバーパンク世界の冒険物語が描かれる。
舞台はネットワークへのアクセスを可能とする「ネット端末遺伝子」という遺伝子が市民権となった遠い未来。
しかしながらこの「ネット端末遺伝子」が感染により人類から失われてネットワーク社会を制御できなくなり、そのうえ人類はAIから市民権のない不法居住者として排除される対象になってしまう。
そうなってからさらに遠い遠い未来、止めることができない「建設者」により都市構造物が際限なく拡張され続け、地上すべてが建物に覆われる。
そんな中で不老不死のサイボーグの主人公は、この世界を止めることができる「ネット端末遺伝子」を持つ人類を探し出すため、長い年月をかけて巨大都市の階層を上へ上へと探索していく。
・・・・・・という難解な設定でスケールの大きいストーリー。
主人公がほとんど語らず黙々と探索していくので、初見で理解することは至難の業。
私は3周くらい読んで、さらにWikipediaで補ってなんとか理解できた(つもり)。
だけど人類がAIなどに排除される絶望的な世界の中、一途の希望をかけてどこまでも続く巨大階層都市を探索する雰囲気は、ストーリーを理解できなくても十分に楽しめる。
終始緊張感に満ちた独特の世界観は唯一無二のもの。
ついでに同作者の『BIOMEGA』もオススメ。
世界観・雰囲気的には同じ類の作品だ。
【7位】孤独のグルメ
大衆食堂で淡々と食事をするハードボイルドな日常グルメ漫画の金字塔!
いつも独り静かに、誰にも邪魔をされず、孤高の食事で幸福に空腹を満たしてゆく。
画像は『孤独のグルメ』2巻。そこいらの大衆食堂で出される食事を淡々と食べていく。
グルメ漫画が得意な久住昌之氏と、リアルな絵を描かされたら漫画界でもトップクラスに巧い谷口ジロー氏のコンビによる傑作グルメ漫画。
仕事で各地を移動する中年男性の主人公が、仕事の合間にその土地の大衆食堂などにふらりと立ち寄って、独り淡々と食事をする。
ただそれだけなのに、そこで出される食事や、それを食べる主人公の心情がリアルなため、読んでいて味が想像しやすく、美味しそうに思えてしまう
また食事だけでなく、店の情景や客の所作、注文に悩む心理もリアルに描かれるところが面白い。
画像は『孤独のグルメ』1巻。初めて入る定食屋での注文や客の様子。
主人公は初めて入った食堂で何を注文するか悩んだり、注文しようと思っていたメニューがなくてガッカリしたり、後から「やっぱりコレじゃなくてアレを注文すればよかった」と後悔したりする。
そういったところに人間味があって共感ができる。
なにひとつ特別な凄い料理がでるわけでもないのに、とことんリアルな描写におおいに食欲を煽られる。
【8位】スプリガン
超古代文明の遺産を巡って戦うSFアクション!
高校生の少年・御神苗優はスプリガンの一員として、各国の軍隊や傭兵、秘密結社などを相手に、古代遺産を守るべく日々戦ってゆく。
画像は『スプリガン』1巻。オーパーツを組み込んだオリハルコン製のパワードスーツを装着して戦う主人公。
「中二要素を料理するのが世界一うまい漫画家」と言われたりする皆川亮二氏のSF格闘アクション漫画。
超古代文明のオーパーツを巡る特殊工作員「スプリガン」の戦いが描かれる。
かつて地球に存在した、現代を遥かに上回る科学力を持った超古代文明。
地球各地に眠るその遺産(オーパーツ)を巡り、世界各国の軍隊や企業が裏で争っているという物語。
主人公は表向きは普通の高校生ながらも、裏ではオーパーツを発見・封印する巨大財閥「アーカム」に所属する特殊工作員「スプリガン」の一員。
その主人公がオーパーツを用いて実用化された通常の30倍以上の筋力を発揮させるパワードスーツ「アーマード・マッスルスーツ」を装着し、傭兵やアメリカの特殊部隊、ネオナチなどと戦っていく中二心をくすぐるバトルが展開されていく。
30年経ったいまでも再アニメ化されるくらいには根強い人気を誇る名作。
特に中盤から後半にかけての熱い格闘アクションは、いま読んでもトップクラスの面白さだ。
【9位】幽麗塔
セクシャル・マイノリティを描いたレトロなミステリー冒険活劇!
そうして天野とテツオは、莫大な財産を巡る様々な事件に巻き込まれてゆく。
画像は『幽麗塔』1巻。財宝が眠ると噂される幽霊塔を中心に殺人事件が起きる。
『医龍』で知られる乃木坂太郎氏による、ジェンダーをテーマとしたセンス・オブ・ジェンダー賞の大賞を受賞したミステリー漫画。
財宝が眠るといわれる時計塔を中心とした冒険ミステリーと同時に、トランスジェンダーの悩みが描かれる。
作品の元ネタは、アリス・マリエル・ウィリアムソンの小説『灰色の女』を基にした、黒岩涙香の翻案小説『幽霊塔』(と、それを江戸川乱歩がリライトした同タイトル)。
本作はその『幽霊塔』を参考にしつつ、セクシャル・マイノリティをテーマに盛り込んで、ほぼほぼオリジナルのストーリーとしてアレンジしている。
主人公はのび太がそのまま大人になったようなダメ人間のニートで、時計塔「幽霊塔」に眠ると噂される財宝を目当てに、謎の美青年と手を組んでいく。
それをきっかけに過去に起きた幽霊塔の惨劇や、幽霊塔を買い取った敏腕検事の目論見、相棒の美青年の正体など、次から次へと謎が迫り、様々な怪事件へと巻き込まれていくことになる。
幽霊塔のミステリーといってもそこだけが舞台ではなく、謎を解明するために各地を旅する冒険活劇もあり、ハラハラドキドキの連続となっている。
またトランスジェンダーを中心とした、セクシャル・マイノリティたちの葛藤もガッツリと物語に食い込んで描写されていく。
そしてその冒険や葛藤を通して主人公と相棒が成長し、友情を育んでいく様もうまい。
冒険ミステリーとしても、葛藤・成長・友情を描いたヒューマンドラマとしても綺麗にまとまっている。
【10位】夕凪の街 桜の国
現代まで続く被爆者家族の日常を描いた必読の原爆漫画!
そして現代まで続く、原爆症により家族を亡くした二世の悩みと差別。
画像は『夕凪の街 桜の国』。被爆者の日常を扱った作品だが、温かみのある絵で暗さを感じさせない。
文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞や手塚治虫文化賞新生賞を受賞した原爆漫画。
戦後に原爆症で命を落とす被爆者と、現代でのその家族の日常が描かれる。
物語は『夕凪の街』と『桜の国』のふたつから構成される。
『夕凪の街』では原爆投下から10年後の広島を舞台に、原爆スラムに住む被爆から生き残った女性の日常と、原爆症による突然の死が描かれる。
そして『桜の国』ではその家族の約30年後と約50年後の日常と、その裏での家族を原爆症で亡くした暗い記憶や、被爆二世への差別などが描かれる。
原爆という重いテーマながらも、明るいタッチの絵柄で平和な日常生活が描写され、そしてハッピーエンドの物語となっているため、とても読みやすし、オススメしやすいのが良いところ。
原爆症や、被爆二世の問題が現代でも続いていることを知るためにも、誰しも一度は読んでおくべき漫画だと思う。1巻完結なのでサラッと読める。
また戦中の広島での日常生活を描いた『この世界の片隅に』もあわせてオススメする。
こちらも悲惨さを感じさせない明るい作風で読みやすい。
【11位】Sunny
実体験を基に児童養護施設の子供たちを描いた松本大洋氏渾身の一作!
問題児の春男と真面目な静を中心に、星の子学園の子供や大人たちの日常が綴られる。
画像は『Sunny』1巻。児童養護施設に預けられた子供たち。
文化庁メディア芸術祭マンガ部門の優秀賞を受賞した、児童養護施設の日常生活を描いた漫画。
親から捨てられたなどの理由で、児童養護施設で暮らすことを余儀なくされた子供たちと、その子供たちと接する施設の大人たち。
この2つの視点での日常が淡々と、しかしリアルに展開されていく。
作者の実体験がベースなだけに描写がリアルすぎて、読んでいて胸が痛くなってくる。
そこまで暗い話というわけではないのだけど、子供たちの笑顔の裏にある心の闇を想うと辛すぎる。
作中に両親に捨てられたことで非行に走る子供が出てくるが、そんな子供が自分を捨てた親の前では、捨てられまいと懸命に素直な良い子として振舞う姿に泣ける。
とまぁ、いくら実体験がベースとはいえ、よくここまでリアルに描けるなと感心する内容が多い。
こういう児童養護施設の子供たちの内情を知れたのは良いこと。
【12位】すごいよ!!マサルさん
少年ジャンプの伝説的シュールギャグ漫画!
彼が部長を務める「セクシーコマンドー部(ヒゲ部)」でちょっとおかしな部活が展開されてゆく。
画像は『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』1巻。独特のシュールギャグはその後の作品に多大な影響を与えた。
ギャグ漫画界に革命をもたらしたシュールギャグ漫画。
『マサルさん』以前と『マサルさん』以降に分類してもいいくらい、その後の漫画に大きな影響を与えた作品で、当時は『マサルさん』に影響を受けた漫画が世に溢れ返っていた。
この漫画の面白さを文章で示すのは難しいが、シュールギャグ漫画のバイブルといっても過言ではない作品なので、シュールギャグが好きな人は読んでおくべきだろう。
いまでも忘れられないギャグのオンパレードで、私も当時かなりハマっていた。
【13位】エマ
19世紀イギリスの身分違いの恋愛を描いたメイド漫画!
貿易商人の跡取り息子・ウィリアムは、かつての家庭教師だった老婦人の家でメイドのエマと出会う。
ウィリアムとエマはお互いに惹かれあうが、しかし身分の差が壁として立ちはだかる。
画像は『エマ』8巻。森薫氏による世界観の描き込みが魅力的。
『乙嫁語り』で知られる森薫氏のデビュー作。
森薫氏のメイド好きが高じて生まれたメイド漫画で、文化庁メディア芸術祭マンガ部門の優秀賞を受賞している。
物語は1890年代のイギリス・ロンドンを中心としたジェントリとメイドの身分差の恋愛話なのだが、何よりその雰囲気が良い。
風俗や背景、装飾品などが丁寧かつ綿密に描き込まれているため、絵でその時代のイギリスを感じさせてくれる。
この作者の「好き」が伝わってくる描き込みが森薫作品の魅力だろう。
メイドやヴィクトリア朝が好きな人にオススメだし、ストーリーの恋愛部分もアッサリした純愛なので男女問わず読みやすい。
【14位】神々の山嶺
山に生きる天才クライマーの人生を描いた登山小説の名コミカライズ!
羽生のことが気になった深町は、なぜ彼がネパールにいるのか、なぜ姿を消していたのか、その謎を追いかける。
画像は『神々の山嶺』4巻。谷口ジロー氏による圧倒的な山の画。
夢枕獏氏の小説を、『孤独のグルメ』などで知られる谷口ジロー氏が漫画化した作品。
小説も名作だが、漫画のほうも文化庁メディア芸術祭マンガ部門の優秀賞や、アングレーム国際漫画祭の最優秀美術賞を受賞するなど、国内外で評価されている。
物語の主役はクライマーとして圧倒的な才能と実力を持ち、すべてを山に注ぎながらも、資金難で海外遠征ができず、頑固で不器用で協調性がないため孤立した不遇の天才登山家。
その登山家のこれまでの人生と、そしてこれから行われる出来事を、カメラマンの視点で追いかけていくお話となっている。
夢枕獏氏の名作小説なだけにストーリーの完成度も高い。
そのうえそれを谷口ジロー氏の圧倒的な画力で再現している。
登山に興味がなくても、こういった何かひとつのことに人生のすべてを賭けた漢の生き様というのは読み応えがある。
これぞ大人の登山漫画。
【15位】テルマエ・ロマエ
古代ローマ人が現代日本の風呂文化に驚愕する風呂コメディ!
そこで古代ローマより遥かに発達し、合理的な日本の風呂の凄さを知ったルシウスは、その着想をもとに古代ローマで浴場を設計し、名声を高めてゆく。
画像は『テルマエ・ロマエ』1巻。古代ローマの技師が主人公。
手塚治虫文化賞短編賞などを受賞し、また欧米でもいくつかの賞でノミネートされるなど世界的に評価されている風呂漫画。
古代ローマ人の目を通して日本の風呂文化が描かれる。
主人公は浴場を専門とする古代ローマの建築技師で、あるとき公衆浴場に浸かっていたところ、なぜか現代日本の銭湯などにタイムスリップしてしまう。
主人公は言葉も文化も違う平たい顔族(日本人)たちに困惑するが、その合理的で発展した風呂文化に驚愕し、その文化を吸収することを決意する。
そうして再びタイムスリップして古代ローマに戻ったところで、日本で体験した銭湯の風呂場や脱衣所、フルーツ牛乳などを古代ローマの公衆浴場で採用し、名声を高めていくという物語。
日本のトイレが凄いのはよく話題に上がるが、風呂文化も凄いのだなと気づかせてくれる良い作品。
そして日本人同様に風呂が大好きだった古代ローマ文化にも親近感を覚えるようになる。
【16位】ハチミツとクローバー
美大生たちそれぞれの片思いの恋愛を描いた青春群像劇!
そんな彼らのもとに、小さく可憐な天才少女・花本はぐみがやって来たことで青春が動き出す。
画像は『ハチミツとクローバー』1巻。コロボックル扱いされるヒロイン。
少女漫画の名作として名高い羽海野チカ氏の恋愛漫画。
美大生たちの微妙に報われない片思いなどの青春模様が描かれる。
みんながみんなそれぞれ片思いをしている片思いの連鎖。
しかも微妙に報われない切なさ。
だけどそれがハイテンションなノリのコメディで展開されていくので、あまり暗さを感じさせないのが良いところ。
こういった青春を送るのも悪くないと思える雰囲気の良い大学生活が人気の秘訣だろう。
20代女性向けの少女漫画だけど、男性でも読みやすい絵柄とストーリーなのもグッド。
【17位】羊のうた
奇病に苦しむ姉弟の儚くも美しい物語!
かつて住んでいた実家を訪れた一砂は、そこで幼い頃に生き別れた姉の千砂と再会。
そして千砂の口から高城家に伝わる発作的に他人の血が欲しくなる奇病について知らされ、千砂もその病に苦しめられていることを知る。
画像は『羊のうた』2巻。姉の血を飲む主人公。
独特の粗削りな画風でコアな人気を誇る冬目景氏の代表作。
他人の血が欲しくなる奇病に冒された姉弟が、他人を遠ざけてふたりだけで寄り添って暮らす、少し背徳的な姉弟愛のお話が描かれる。
そのストーリーも冬目景氏の作品の中ではまとまっているほうだが、なにより絵と雰囲気が作品にマッチしているのが良い。
粗いタッチが儚くも美しい雰囲気を出していて魅了される。
この漫画をキッカケに、冬目景氏の作品が一気に好きになってしまった。
また冬目景氏の短編だと『ももんち』が1巻完結で綺麗にまとまっている。
冬目景入門としてはむしろこちらのほうがオススメなのかもしれない。
【18位】竹光侍
ピカソ的技法を漫画に取り入れた剣豪時代劇アート!
瀬能は変人ながらも、優しい性格で周囲の人々に愛される。
しかし瀬能には本人も知らない秘密があり、そのために政争に巻き込まれ、刺客に命を狙われることになる。
画像は『竹光侍』1巻。松本大洋氏の絵で描かれる時代劇。
僧侶にして漫画家の永福一成氏と、『ピンポン』などで知られる松本大洋氏のコンビによる時代劇漫画。
文化庁メディア芸術祭マンガ部門の優秀賞や、手塚治虫文化賞のマンガ大賞を受賞するなど高く評価されている。
この漫画の何が凄いのかというと、それは↓のようなとても個性的な絵。
画像は『竹光侍』2巻。松本大洋氏の挑戦的な画風が特徴。
ピカソ的(キュビズム的)な技法を用いた画風というのだろうか。
松本大洋氏は作品ごとに画風を変えてくるが、今作では特に芸術的な挑戦になっている。
もちろん絵だけでなく、ストーリーも天才剣士の剣豪アクション物語として綺麗にまとまっている。
しかしそれ以上に絵のインパクトが大きく、はじめて読んだときは「漫画でもこんな描き方ができるのか!」と目からウロコだった。
【19位】日常
高校を舞台としたシュールオブシュールな不条理日常ギャグ!
そんなシュールな日常が今日も繰り広げられる。
画像は『日常』1巻。シャケが降ってくる日常。
よくわからないノリだけど笑ってしまう日常シュールギャグ漫画。
シュールギャグの中でも抜きん出たシュールギャグなので、たぶん理解できない人にはまったく理解できないけど、ツボに入る人にはとてもツボに入る。
個人的にはとてもツボに入った。
ともあれ作者のセンスは間違いなく天才的だ。
【20位】彼方のアストラ
少年少女たちのSF惑星冒険サバイバル&ミステリー!
惑星キャンプへと旅立った高校生たち9人は謎の襲撃を受け、故郷から遠く離れた宇宙空間へと飛ばされ遭難してしまう。
しかし運良く宇宙船を発見し、9人は協力して故郷への帰還を目指してゆく。
画像は『彼方のアストラ』1巻。謎の球体により遠い宇宙へ飛ばされる。
現代少年誌で宇宙が舞台のSF漫画というのは鬼門といえるほど難しい題材だが、それでヒットした異例の作品。
ついでに全5巻の短さなのも少年誌では珍しい。
そしてマンガ大賞も受賞している。
舞台は気軽に宇宙へ行けるようになった未来。
惑星キャンプへいくことになった主人公たち高校生9人は、謎の球体によりどこか遠くの宇宙空間へと飛ばされてしまう。
その主人公たちが偶然見つけた宇宙船を使って惑星間を旅しながら、なぜ飛ばされたのか、誰が飛ばしたのかの謎を解明していくお話となっている。
冒険サバイバルだけでなく、そういったミステリー要素があるのが面白い。
特に後半の怒涛の展開には驚愕させられた。
子供から大人まで楽しめるSFでオススメ。
【21位】銃夢
ハリウッド映画化されたサイバーパンク格闘アクション!
荒廃した地上に捨てられていたサイボーグの少女・ガリィは、クズ鉄町で暮らすサイボーグ専門医により修理されるが、長い休眠状態だったためか過去の記憶をすっかり失っていた。
画像は『銃夢』1巻。サイボーグの少女が主人公。
『アリータ:バトルエンジェル』のタイトルでハリウッド映画化されたSF格闘漫画。
90年代のサイバーパンクを代表する漫画のひとつで、全身サイボーグの少女の闘いが描かれる。
舞台はいまより遥か遠い未来。
空中都市「ザレム」が高度な文明で豊かな暮らしを送る一方、地上に残された人類は荒廃した世界で暮らしていた。
主人公の少女は頭部と胸部のみで地上のスクラップの山に眠っていたところを、スラム街のサイボーグ専門医に拾われて修理される。
長い仮死状態により記憶を失ってしまうが、戦いを通して記憶を取り戻していき、賞金稼ぎをしたり、恋愛をしたり、モーターボールと呼ばれる格闘球技の選手になったりと、波乱万丈の闘争に満ちた人生を送ることになる。
サイバーパンク漫画という点では『攻殻起動隊』と比較されることもある本作だが、『攻殻起動隊(原作)』はキャラクターより世界設定の描写がメインなのに対して、こちらはキャラクターを重視している。
魅力的なキャラクターによる格闘アクション漫画で分かりやすい。
映画の続きが気になる人にもオススメ。
漫画と映画では設定が少し違うけど、続きは3巻の途中からとなる。
本編は一旦完結したものの、その後にパラレルワールドの続編が続いている。
【22位】ヘルシング
吸血鬼とキリスト教とナチスのダークファンタジー・バトル!
大英帝国の王立国教騎士団・通称「ヘルシング機関」に所属する最強の吸血鬼・アーカードは、吸血鬼でありながら吸血鬼を狩ってゆく。
画像は『HELLSING』1巻。主人公の吸血鬼・アーカード。
ヒラコー節が光る吸血鬼バトル漫画。
現代イギリスを舞台に、吸血鬼とバチカン、そしてナチスの三つ巴の戦いが描かれる。
吸血鬼を題材とした漫画は数多くあるが、これはその中でも特にカッコイイ。
最強の吸血鬼である主人公をはじめとする個性的なキャラクターの面々と、作者独特の印象に残る台詞回しに魅了される。
何気に海外でも人気があるそうだが、それも納得のセンスあふれるかっこ良さ。
【23位】ひきだしにテラリウム
『ダンジョン飯』の九井諒子氏による傑作ショートショート集!
画像は『ひきだしにテラリウム』。ショートショートの主人公として生まれた少女のお話。
1話数ページからなるショートショートの作品集。
小説だと星新一氏などで有名だが漫画ではとても珍しい。
九井諒子氏というと『ダンジョン飯』が大人気な作家。
しかしこちらも文化庁メディア芸術祭マンガ部門の優秀賞を受賞するなど評価されている。
内容は主にSFの日常コメディが中心で、様々なクスッとするお話が33話も詰め込まれている。
しかもストーリーにあわせて毎回画風を変えており、芸が細かい。
こちらも『ダンジョン飯』に劣らない傑作だと思う。
また同作者の『竜のかわいい七つの子』と『竜の学校は山の上』も、面白いファンタジー短編集でオススメだ。
この九井諒子氏はリアルなファンタジー世界を描くのが本当にうまい。
【24位】山賊ダイアリー
リアルな狩猟&ジビエを描いたコミックエッセイ!
ウサギやハト、カラス、イノシシなどを狩猟し、それを解体して調理するリアル猟師生活の日々が描かれる。
画像は『山賊ダイアリー』1巻。狩ったカラスを調理する作者。
『ソウナンですか?』の原作で知られる岡本健太郎氏による狩猟&ジビエのコミックエッセイ。
実際に猟師をしていた作者の実体験をもとに、猟師仲間たちと楽しく狩猟をする様や、獲物を調理して食べる様が淡々とリアルに描かれる。
ウサギやハトやカモやマムシやカラスやイノシシなども、狩って解体して調理して食べる。
そういった料理がとても美味しそうで、読むと猛烈に肉が食べたくなってくる。
また猟銃や狩猟免許の取得から、猟の手法、サバイバルの知識、猟師のコミュニティといった、猟師のリアルを知れるのも嬉しい。
正直絵は下手だけど、それを補ってあまりある魅力のある漫画だ。
これを読むと猟師になるのも悪くないなと思えてくる。
【25位】レベルE
冨樫ワールド全開のSF日常オムニバス!
引っ越し先の部屋に行くと、そこには勝手に侵入して生活をしている自称宇宙人の青年がいた。
画像は『レベルE』上巻。自称宇宙人の青年と遭遇してしまう野球少年。
冨樫義博氏が好きなように描いたオムニバス形式の短編集。
宇宙人を題材としたSFで、基本的には地球にやって来た天才バカ王子の悪ふざけに周囲が振り回されるお話となっている。
内容としては『幽遊白書』後半の日常物に近い感じ。
少年誌だけど大人好みの展開で、これはこれで冨樫氏の良さが出た名作だ。
【26位】セトウツミ
男子高校生が川辺でまったり放課後トーク!
性格は対極なのになぜか気の合う2人は、毎日放課後に川辺でダベって暇をつぶす。
画像は『セトウツミ』1巻。高校生ふたりが川辺で放課後トークをしていく。
男子高校生ふたりが、毎日まったりと川辺で放課後トークを繰り返す1話完結のギャグ漫画。
奇抜なシチュエーションを用いるのではなく、会話のセンスや間の取り方で笑わせにくる。
漫才が好きな人にオススメだと思う。
しかも最後には驚愕の展開も用意されている。
まさかこれまでの会話が伏線だったとは・・・・・・とストーリーの構成にもビックリ。
【27位】あれよ星屑
復員兵2人の日常を描いた戦後東京アンダーワールド!
酒浸りの暮らしをしていた復員兵・川島徳太郎は、かつて死線を共にした戦友・黒田門松と再会する。
画像は『あれよ星屑』1巻。戦後混乱期の雑多な東京が描かれる。
手塚治虫文化賞の新生賞を受賞した戦後漫画。
戦争を生き延びた上官と部下の2人の復員兵を通して、戦後の焼け野原になった東京の闇市での日常と、2人の戦中の過去が描かれる。
特に闇市というアンダーグラウンドが舞台なのが面白い。
そこで雑炊屋を営む暮らしから、売春婦たちや、親を亡くした子供たちまで、綺麗事ではない戦後混乱期の光景がとてもリアルに映し出されていく。
また普通の漫画なら描かない性的なところも包み隠さず直球に描いてくるが、それはそれでよりリアルさを感じる。
戦後混乱期の混沌とした雰囲気が出ている良い作品。
【28位】僕だけがいない街
タイムリープ能力で真犯人を探すミステリー・サスペンス!
ある日小学生の頃に起きた連続小学生誘拐事件の真犯人に母親が殺され、その罪を擦り付けられる。
しかしそのことがキッカケで小学生の頃までタイムリープし、子供の頃に戻って当時の事件を追うことになる。
画像は『僕だけがいない街』1巻。小学校の出来事が話のメイン。
タイムリープ能力で小学生時代に戻り、過去に起きた殺人事件を解決するサスペンス・ミステリー漫画。
単に事件を解決するだけでなく、虐待を受けている同級生を救おうとするなど、事件を追う過程で周囲の人々を救っていくところが面白い。
先が気になり、どんどん引き込まれていく。
【29位】土星マンション
コロニーの窓拭きの仕事をするSFヒューマンドラマ!
中学を卒業した少年・ミツは、亡き父と同じくコロニーの外側から窓を拭く仕事に就く。
画像は『土星マンション』1巻。コロニーの窓拭きをするお仕事。
文化庁メディア芸術祭マンガ部門の大賞を受賞し、実写映画化も予定されていたが、リーマンショックの煽りを受けて中止になってしまった不運な作品。
舞台は人類が地上で暮らせなくなり、遥か上空のコロニーで暮らすようになった遠い未来。
そこで宇宙服を着て命綱を頼りにコロニーの窓拭きをするという危険な仕事をする主人公が、仕事で出会う様々な人々を通して成長する様が描かれる。
宇宙のお仕事モノという点では、宇宙のゴミ拾いを描いた『プラネテス』に近い形だろうか。
コロニーの窓拭きという仕事を題材にしたところが面白い。
SF要素よりもヒューマンドラマがメインなので、そういうのが好きな人にオススメ。
【30位】いちえふ
震災後の福島原発で実際に働いたルポ漫画!
そこで実際に作業員として働いた作者が、作業員の立場から実態を描きだす。
画像は『いちえふ』1巻。震災後に原発作業員として実際に働いた作者。
東日本大震災による事故で色々と噂された福島第一原子力発電所(通称1F)。
その1Fで実際に働いた作者の体験を記した現地報告となっている。
作業員としての採用までの流れや、作業員が実際にどのような環境で、どのような仕事をしていたのかが分かりやすく描かれている。
また1F内での闇取引めいた転職活動などの話もあって、読み物としても面白いところがある。
国内だけでなく海外からも注目された作品だが、原発のリアルを知っておくためにも一度は読んでおくべきだろう。
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